お母さんが服用した薬は母乳を飲む赤ちゃんの体内に入ります。
ただしお母さんが飲んだ薬の全てが母乳に出てくるわけではなく、
飲んだ薬の1%未満とも言われています。ですから妊娠期の胎盤移行よりもはるかに安全です。
薬によっては母乳にほとんど出ないもの、赤ちゃんが飲んでも全く心配ないものあります。
母乳への移行は薬によって違います。またお母さん、赤ちゃんの状態によっても違います。
●薬の因子
母乳に移行しやすい薬剤は下記のような特徴があります
①分子量が小さい(200以下 アルコール、バルビツール酸(ある特定の医薬品に含ま
れる化合物)などは細胞膜の細孔を通過する)
②タンパク結合率が低い(血漿タンパクと結合した薬剤は細胞膜を通過しない)
③脂溶性が高い(バルビツール酸、サリチル酸などは脂質でできている細胞膜を通過す
る速度が速い)
④塩基性(血漿中のPH7.4では分子型となり母乳中に移行しやすく、
取り込まれた母乳中PH6.8ではイオン型となり血漿中に戻りにくく蓄積されやすい)
⑤血中半減期が長い(半減期の5倍の時間が経過すれば母体から薬剤は消失したと考えていい)
⑥生体内利用率が高い
●お母さん側の因子
①飲み薬より吸入、湿布薬の方が影響が少ない
②長期間の服用の方が影響が出易い
●赤ちゃん側の因子
①早産児、新生児は薬のリスクが高くなる。月齢が進み体重当たりの母乳摂取量が少 なくなるとリスクは低くなる。また赤ちゃんの代謝、排泄機能が発達してくるので影響も減る。
②赤ちゃん自身も薬をのんでいる場合、お母さんが服用中の薬との相互作用が起こる可能性がある。
NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は妊娠後期に服用すると胎児動脈管収縮の可能性があり禁忌 。添付文書でも投与回避、授乳中止となっており、母乳育児をしている母親は 服用を避けて痛みを我慢していることがあります。
実はNSAIDsは母乳への移行が少なく服用しながら授乳が可能です。
ロキソプロフェンはヒトでは乳汁中に移行しないことが報告されています。
活性代謝物は血中では水溶性であるため母乳に移行しにくく、乳児の消化管でも吸収されにくく
半減期も1.3時間程度であり、母乳に移行する薬剤の絶対量は少ないと考えられます。
ですから「授乳中に服用しても心配ない」と言えます。
少し難しい言葉も出てきましたが、このように薬剤師はお薬をお渡しする際、処方箋に基づき患者様の状態に合わせて様々な方向から安全によりよくお薬を使っていただけるように最大限の配慮をします。
薬局でお薬を受取る際はどんなことでも薬剤師に聞いてみてください。